日本市場は昔から、諸外国には「独特で参入が難しい市場」として知られています。グローバルマーケターの皆様へ、日本市場の基本情報をご紹介します。
日本の市場規模
– 世界第3位のGDP5.15兆ドル。日本は世界経済の約10%を占めています。
– 自動車総売上の1割が日本ブランド
– 世界第3位のスマホゲーム市場
それでは、日本の市場の6つの特徴を詳しく見てみましょう。
1. 厳しい日本の消費者
日本の消費者は、商品に限らず様々な理由で「世界で最も厳しい消費者」と言われています。プロのようなレベルの商品知識を持った「オタク」な消費者も少なくありません。「お客様は神様」という価値観が根強いためか、普段は冷静な日本人が、突然お客様の立場になってサービス提供者に対する態度が大きくなることがあります(最近ではカスタマーハラスメントが社会問題になっています)。世界で成功しているグローバル企業であっても、この捉えどころのない日本市場を理解することは容易ではありません。
日本の顧客の期待は多岐に渡ります。
– 製品の品質- (色/種類)バリエーション
– カスタマーサービス
– 価格
– 開封しやすいなどのパッケージ(物理的な商品の場合)
2. 日本語でのローカライズが必要
日本人で英語を常用できる人は3%~5%以下と非常に少ないので、ホームページから広告、商品情報まですべて日本語に翻訳する必要があります。精神的に英語にアレルギーを持っている人もいるため、日本語でのローカライズは最低限必要です。
3. 現在も根強い官僚主義
欧米では承認が不要なものも、規制、許可、認証、手続き、事務所、承認手続きなどを諸々の手続きが必要なことが少なくありません。これらの規制の多くは、既存産業への新規参入者にとっては難問として存在しています。ただし、これらの規制は近年ゆっくりと緩和されつつあります。弁護士や経験豊富な経営コンサルタントなどの専門家の力を借りざるを負えない状況もあります。例えば、タクシーとしてのUberは日本では他の国ほど普及していません。そして最近、Uberは地元のタクシー会社と協力しようと戦略を変えています。また、日本政府は貸主に様々な届出を義務付けるなど、日本でのAirbnbビジネスに高いハードルを課しています。
しかし、日本は欧米に比べて外部からの投資に対してオープンな産業もあります。例えば、ボーダフォンは、日本の第 3 位の通信事業者のほぼ 100%を買収しました。後にボーダフォンが撤退したのは、日本の閉鎖性や政府の介入とは関係のないことでした。
4. 美化された節約観
日本の節約観は、特にアメリカ人やアジア人のような購買意欲の高い人たちにとっては、特に特殊なことかもしれません。政府も「節約より投資」というキャッチフレーズを掲げているほど、日本人は一般的に無駄遣いをするよりも節約を好みます。2017年、個人の貯蓄額の合計は1800兆円に達しました。
あるビジネスコンサルタントは以下のような理由を挙げています。- 人々は市場がもう劇的に成長しないことを知っている。- 製品が安くなったとしても、人々の購買意欲を高めることにはならない。- 製品や成功のためのこれ以上のハングリー精神がない- 人は経費のかかる料理を食べようともしない – 1食500円で食べられる。
5. 多様なターゲットを持つ、単一民族
アメリカをはじめとするアジア諸国では、ターゲットセグメンテーションの軸として民族性が用いられることが多いですが、単一民族国家と言われることの多い日本では、マーケティングにおいて民族性の軸が考慮されることはほとんどありません。そのため、多くの外国人マーケターは「シンプルでわかりやすい」という印象を持っているかもしれません。
しかし、日本にしばらく住んでいると、これが大きな誤解であることにすぐに気づくでしょう。一見似ているように見えて属性(人口動態)が似ていても、よく見ると価値観(サイコグラフィック)は非常に多様です。そのため、デモグラフィックではなく、価値観に基づいたターゲットのセグメンテーション軸を確立することは、日本市場のマーケティングにおいて非常に重要なステップとなります。
女性の社会人をメインターゲットにしていても、このセグメントは幅が広すぎて、共通のニーズを持った一つの存在として捉えることができないため、価値観の網目を細分化していく必要があります。
ここで、簡単にターゲットのセグメンテーションをしてみましょう。
キャリアウーマン – その中に様々な種類がある独身男性 – モチベーションが低いため、これらの人たちを獲得するのは容易ではないが、一度商品を買ってしまえば忠誠心がある。パワーカップル – 一緒に年間700万円以上(66000ドル)を稼いでいる。
6. 宗教的ではないが、根強い文化や伝統の価値観。
多くの外国人は、日本は無宗教の国だと思っているかもしれませんが、伝統的な価値観は根強いと言えます。確かに憲法で政教分離が規定されており、日本人の約7割が特定の宗教を持たないのは事実です。
しかし実際には、他の国にはない日本独自の伝統的価値観があることは否めません。これらの伝統的価値観は、神道、仏教、儒教、武士道などの価値観が複雑に絡み合って長い時間をかけて形成されてきたものです。そのため、インド市場でのヒンドゥー教やインドネシア市場でのイスラム教とは異なり、外国人には宗教として捉えられにくいことが少なくありません。しかし、それを「宗教」と呼ぶかどうかは別として、日本市場でマーケティングを行う上で重要な要素であることは間違いありません。
物や自然を大切にするという伝統的な価値観は、子供の頃から八百万の神様に親しんできた日本人にとって、ごく自然な考え方です。これをマーケティングの文脈で言えば、日本市場の特徴である「モノ」や「所有」に対する独特の感覚と言い換えることができます。近年、シェアリングエコノミーの台頭が著しいですが、同時に「モノ」や「所有」に対する執着心が根強く存在します。これは、「モノ」にも精神的価値を見出す日本人の伝統的な価値観と無関係ではないでしょう。
その良い例が、フリーマーケットアプリ「メルカリ」の成功例です。彼らは「もったいない」という日本人の概念を再定義しました。まさに日本人の洞察力をくすぐったのです。
フィリップス エレクトロニクス ジャパンのCEOであるダニー・リスバーグ氏による日本市場に関するコメントをご紹介します。「他国のユーザーはパッケージが開けにくかったとしても、製品さえしっかりしていればそんなことは気にしません。それに比べると日本人はかなり細かい。しかしこの「細かさ」に対応しなければ、日本人には買ってもらうことはできたとしても、満足してもらうことはできません。言い換えれば、日本の消費者を満足させる製品を作れば、世界中の人々を満足させることができるのです。したがって、新製品を導入する前に日本人に意見を求めたり、日本で製品テストを行ったりすることがあります。高品質な製品が求められる日本市場での成功が、グローバルでの成功につながるからです。日本でビジネスを進めるにあたり、特に意識している点は、すでにマーケットがあるところに製品を投入すること、マーケットニーズの理解に時間をかけることです。最初から日本人の細かいニーズに対応する製品を開発するのでは、膨大な時間とコストがかかってしまいます。そこで製品ラインアップはそのままに、日本の消費者ニーズを入念にリサーチし、受け入れられるための戦略を十分に練って発売します。日本人のニーズや好みにワンステップ近づくことが大切です。」
参考:
https://www.japanstrategy.com/business-in-japan
https://adv.asahi.com/special/contents160098/11052081.html